リングペッサリー
性器脱の症状があっても手術を希望しない方や性器脱手術までの一時的な治療法を望む方を対象として、保存的治療の1つであるペッサリーを用いた性器脱整復が行われます。ペッサリーを用いた治療には標準的に確立されたものがありませんが、日本ではリング型ペッサリーを使用して、外来受診時にペッサリーを脱着している施設が多いようです。
ペッサリーの種類
ペッサリーの種類はリング型やゲルホン型のような支持型とドーナッツ型やキューブ型のようなスペース占拠型に分類されます。またそれらにダイアフラムの加わったものがあります。日本で使用されているものは主にリングペッサリーで、使用素材の違いにより軟らかいものと硬いものがあります。リングペッサリーは帯下の排出、装着のしやすさなど優れた点もありますが、著しい性器脱や子宮摘出後の症例では対応できない場合もあります。著しい性器脱や腟口が極端に広い症例ではゲルホン型やキューブ型のペッサリーが必要となることが多いようです。
ペッサリーのサイズ選択
リングペッサリーの最適サイズはペッサリー挿入後に腟壁とペッサリーの間に指が軽く挿入できるぐらいの緩みが必要です。ペッサリーのサイズを必要以上に大きくすると、排尿・排便困難、違和感や痛みを覚える場合も多く、長期的には腟壁びらんのリスクも増大します。腟口の大きさに比較して、腟長が短い方にリングペッサリーのサイズを大きくして対応するのは限界があります。
ペッサリーの脱着
- (1)外来での脱着
多くの施設ではペッサリー挿入後は1~3カ月ごとに受診し、腟壁状態を確認して腟洗浄やペッサリー交換などをします。自分でペッサリーを扱う必要がないという利点はありますが、定期的に診察しても帯下が増加することが多く、その臭いなどに困惑する方もいます。長期的にはペッサリーによる腟壁びらんを生じやすく、放置状態が続くなどの理由でペッサリーが腟壁へ陥入して、ペッサリーの切断除去や外科的処置を必要とする場合もあります。 - (2)自己脱着
海外で広く行われているペッサリーの自己脱着は、一旦習得すれば簡単な方法であり、高齢者でも行えます。当院で指導している方法では帯下を伴わず、腟壁びらんにはなりにくく、重大な合併症は認めていません。不快感を伴わず十分な治療効果を得られるため、満足度が高い治療法です。起床時の挿入と就寝時の抜去を基本として、1日1回自己脱着します。2日に1回の自己脱着でも帯下や腟壁びらんを認めていません。また旅行などで脱着が困難な場合に数日間挿入したままでも問題は生じていません。ペッサリー挿入後の初回受診は1~2カ月後で、その後は6カ月ごとの受診となります。