詳細な診療情報

女性泌尿器科

詳細な医療情報 女性泌尿器科

主な手術と疾患の説明

骨盤底(こつばんてい)という女性の弱点

女性の骨盤底には、男性と異なって、尿道、肛門の間に腟という第三の出口があります。このような構造的弱点のため、妊娠・出産や加齢で骨盤底の結合組織が緩むと、咳や運動で漏れる「腹圧性尿失禁」、子宮や膀胱が下に下がる「骨盤臓器脱」(性器脱とも言う)の二大疾患が起こるほか、過活動膀胱、排尿・排便障害などにも関係します。

米国女性の10人に1人が生涯のうちに尿失禁か骨盤臓器脱で手術するというくらい、欧米では以前から女性泌尿器科、ウロギネコロジー(ウロは泌尿器科、ギネは婦人科)が盛んでした。日本では命に関わらないと軽視されがちでしたが、女性のQOL(生活の質)への影響は大きく、新しい手術や薬の導入をきっかけに啓発が進みつつあります。

待ったの効かない過活動膀胱

尿もれの多くは、尿を貯める袋(膀胱)が小さく敏感な切迫性尿失禁と、袋の出口が緩んだ腹圧性尿失禁の2タイプに分かれます。
 切迫性は、トイレで下着を下ろす間、玄関先やトイレに入る拍子に我慢ができずに漏れたり(ドアノブ尿失禁)、炊事で冷たい水に触れる、水の音を聞くといった刺激で尿意切迫感が起きやすくなります。(手洗い尿失禁)
 「過活動膀胱」を尿意切迫感で定義すると、40歳以上の日本人の12.4%が当てはまり、加齢でさらに増加します。
 排尿日誌で、水分摂取や尿量のパターンを見て生活指導を行い、膀胱の筋肉の勝手な収縮を抑える抗コリン薬、膀胱の筋肉をゆったりさせるβ3作動薬(β3刺激薬)を使います。次の手として、ボトックス膀胱壁内注入が期待されています。

妊娠・出産と性器脱・尿失禁の関係

咳、運動で漏れる腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、出産や加齢で骨盤底が緩み、腹圧がかかった時に、尿道が腟の方に下がって開きやすくなることから起きます。
 咳、くしゃみで漏れ、花粉症、風邪のときに大変、スポーツ(テニス、エアロビクス)にパッドが必要、ひどくなると小走りや歩行でも漏れるようになります。軽症では骨盤底筋トレーニング、重症では手術と言われてきましたが、TVT手術は欧米では日帰り手術も行われるほどに負担が軽く(当院は2泊3日)、ハードルが低くなりました。ポリプロピレンメッシュのテープを通して、中部尿道をサポートする術式で、世界で100万人以上が受けており、長期成績は5年で治癒85%、改善10%と良好です。傷はお腹に5ミリが2つ、腟に15ミリと目立たず、術前の剃毛もいりません。
 テープをお腹の方に通すTVT手術(恥骨後式)の代わりに、足の付け根の方に通すTOT手術(経閉鎖孔式テープ)を選ぶこともできます。TVT手術で極めて稀に起こるとされる膀胱損傷の危険を避けることができ、術後排尿困難も少ない傾向があります。非常に重症な例、再手術例ではTVT手術の成績がやや上回るため、「効果のTVT、安心のTOT」と言われますが、いずれも評価の定まった良い術式です。

骨盤底筋トレーニング

下垂感や排尿症状を起こす骨盤臓器脱(性器脱)

(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱)

骨盤臓器脱は、骨盤底の緩みから、腟から子宮が出てきたり、腟の壁と一緒に膀胱や直腸が下がってくる一種のヘルニアです。子宮を取った後でも、腟の壁が裏返しになったようになって下がることがあります。入浴時にピンポン玉みたいなものに触れる、歩行時や排便時に下がって不快という症状が多く、尿失禁や排尿・排便障害をよく伴います。従来はリングペッサリーの使用(自己着脱法など)、子宮を取って腟の壁を縫い縮める手術(腟式子宮摘除と腟壁形成)が行われてきました。
 最近は、メッシュ手術といって、TVT手術と同じ材質のメッシュで、緩んだ骨盤底の靱帯や筋膜を補強する方法が出てきました。手術負担が軽い、入院期間が短い(当院はTVM手術5日)、傷の痛みが少ない、子宮温存が可能、再発が少ないなどの利点が言われています。当院は約2,000例行っています。

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