医療関係者へ

特殊高度診療機能

小児血液腫瘍科

1.概要およびスタッフ

 小児血液腫瘍科においては、1984年の小児医療センター開設以来、急性白血病、神経芽腫、脳腫瘍などの血液腫瘍性疾患および再生不良性貧血等の造血不全、特発性血小板減少性紫斑病や溶血性貧血、好中球減少症、血友病等の非腫瘍性血液疾患ならびに副腎白質ジストロフィー、ムコ多糖症等の先天性代謝異常症の診療を継続しています。西病棟7階の小児医療センター病棟にて一日平均25-35人の患者さんの入院診療にあたっています。スタッフは、加藤剛二部長、吉田奈央副部長、坂口大俊医長など5名の専任スタッフとローテーターの医師により構成されています。また当科で研修した小児血液腫瘍を目指す多くの医師が名古屋大学小児科の血液部門に進み、さらに同大学からの当科への赴任も多く、両医療機関の緊密な連携を維持しております。

2.悪性疾患に対する診療

 悪性腫瘍に対する診療としては化学療法と造血幹細胞移植がその中心となっています。血液悪性腫瘍に対する化学療法に関しては日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)に参画しており、同研究グループが推進する多くの臨床研究、すなわちALL-B12、ALL-T11、MLL-10、AML-12、AML-D11、B-NHL-03、JMML-11、CML-08、TAM-10、HLH-2004、等の急性白血病や悪性リンパ腫に対する全国共通の治療プロトコールを院内倫理員会承認後遂行しております。

 また造血細胞移植は、当科が特に積極的に推進している治療方法で1982年以来600例を超える造血細胞移植を施行しており、小児科領域では国内で2番目に多い症例数となっています。化学療法が無効と判断された、もしくは化学療法後に再発された難治性の白血病や骨髄異形成症候群および悪性リンパ腫等の患者さんに対して、HLA一致もしくは不一致の血縁ドナーおよび骨髄バンクドナーからの骨髄移植、もしくは臍帯血バンクからの臍帯血移植を行っていますがドナー選択に関しては疾患の病期、HLAの適合度および緊急性の有無等によって患者さんに最も適切なドナーを選択しています。

 なお近年は非寛解期移植やHLA不適合者間移植など、いわゆるハイリスクの造血細胞移植の割合が増加しています。こうしたハイリスクの造血細胞移植では、移植後の合併症死亡が大きな課題となりますが、当科では移植合併症予防に積極的に取り組んでおり、種々の支持療法の導入にて生存率の向上と共に下図のように近年移植関連合併症死亡率の改善を認めています。

 また当科では造血幹細胞移植後の晩期障害(不妊や低身長等)の軽減を目的として移植前処置の強度を軽減した骨髄非破壊的移植を一部の患者さんに対して施行しており、その効果が確認されつつあります。

 また、神経芽細胞腫や肝芽腫、ウイルムス腫瘍ならびに脳腫瘍等の固型腫瘍は各腫瘍研究グループの化学療法や放射線療法と共に小児外科医や小児脳神経外科医による手術、および自家末梢血幹細胞移植による集学的治療を行っています。

3.非腫瘍性疾患に対する診療

 非腫瘍性血液疾患の代表的疾患である再生不良性貧血に対しては、免疫抑制療法や同種造血幹細胞移植によって90%以上の長期生存率と原病の治癒が得られています。また先天性の造血不全症であるファンコニ貧血や重症好中球減少症に対しても骨髄移植で良好な成績が得られています。

 血友病に対しては重症および一部の中等症に対して凝固因子製剤の定期補充療法を外来で施行しております。特に乳幼児期は埋め込み型中心静脈カテーテル(ポート)を用いて行うため負担が少なくなっています。

 なお当科では一部の先天性代謝異常症に対しても造血細胞移植を行っています。すなわち副腎白質ジストロフィー症は現時点は有効な薬物療法のないため、またムコ多糖症では酵素療法が中枢神経症状の進行抑制には無効のため造血細胞移植の適応となり、移植後病状の改善や進行の停止が得られる場合もあるため当科では日本国内各地から患者さんを紹介いただき、積極的に同種移植、とりわけ臍帯血移植を中心に行っています。

4.造血幹細胞移植に関する研修会

 当院は厚生労働省より造血幹細胞移植拠点病院に指定されているため小児の造血幹細胞移植に携わるスタッフを対象に小児造血幹細胞移植セミナーを毎年開催しています。例年、全国より80名以上の方々にご参加いただき、各回のテーマに絞ったワークショップによる討論や講演会を行っています。