医療関係者へ

詳細な診療情報

乳腺内分泌外科

乳癌診療情報

乳癌の症状

乳癌の初発症状は大部分(80%以上)が乳房のしこり(腫瘤)で、他には痛み、乳頭の分泌、乳頭のびらん、腋窩のしこり等があります。マンモグラフィや超音波検診の広まりにより、無症状で発見される乳癌が増えつつあります。非触知(しこりを触れない)乳癌は非浸潤癌(ステージ0)の事が多く、非浸潤癌で発見され治療を受けた場合は転移がなく、予後も非常に良好です。

診断に必要な検査

  1. マンモグラフィ
    専用のレントゲン撮影装置で乳房をはさんで写真を撮ります。腫瘤(しこり)、癌に特有の石灰化病変、その他の所見(構築の乱れなど)をマンモグラフィ読影医が判断します。
  2. 乳房超音波検査(エコー)
    被爆のない検査法で、外科外来または検査室で行います。比較的若い高濃度乳腺に有効です。
  3. 穿刺細胞診
    細い針を腫瘤に穿刺して細胞をとります。エコーで見ながら確実に採取するようにしています。
  4. 針生検
    局所麻酔下に腫瘤にやや太い針を穿刺して組織を調べます。穿刺細胞診より詳しく診断することができます。
  5. マンモトーム生検(予約制)
    しこりが触れないマンモグラフィや超音波のみで観察される腫瘤など、診断がむずかしい病変に対して有効な検査法です。局所麻酔下に小さな傷から特殊な針を穿刺して組織検査を行います。従来の手術による生検と比べ、入院の必要がなく、傷もほとんど残りません。

乳癌と診断されたら

上記の検査により乳癌の診断を受けたら、CT、MRI等により、腫瘍進展範囲、進行度(ステージ)を調べて治療方針を決定します。

乳癌治療

乳癌治療は手術以外に化学療法・内分泌療法・抗体療法などの薬物療法、放射線療法などの治療法を組み合わせる集学的治療で、年齢、腫瘍の進行度、腫瘍の生物学的特徴などによって治療法に違いがあります。乳癌診療ガイドライン(日本乳癌学会編)、乳房温存療法のガイドライン、ザンクトガレンのコンセンサスレポートなどの科学的根拠(エビデンス)に基づいて治療法を決定しています。

1.手術

  1. 乳房温存術
    しこりから2cmの安全域をとって切除して(円状切除)、腋窩のリンパ節を切除する方法です。乳頭・乳輪と病変のない部分の乳腺が残りますが、ある程度の乳房の変形が残る場合があります。腫瘤の大きさがあまり大きくない方、乳腺内に広がっていない方が対象になります。
  2. 胸筋温存乳房切除術
    全乳房と腋窩のリンパ節を切除する方法です。癌が乳房の中に広がっている場合にこの手術が適応となります。
  3. センチネルリンパ節生検
    術前に画像診断などで脇の下のリンパ節への転移がないと判断される患者さんではアイソトープを用いたセンチネルリンパ節生検法による腋窩リンパ節郭清省略を積極的に行っています。これにより、郭清に伴なう合併症(上肢のむくみ、リンパ液の貯留、運動障害、知覚異常や疼痛を特徴とする神経障害)を防ぐことが出来ます。
  4. 乳房再建術
    乳房再建術は当院形成外科により施行可能ですので、ご相談下さい。

2.薬物療法

術後に再発予防のために使う場合、転移や再発のある乳癌の治療として使う場合、術前に使う場合があります。

A化学療法(抗癌剤)

乳癌の化学療法はいくつかの薬を組み合わせて点滴で投与することが多く、現在当科では初回のみ入院治療しますが、2回目からはほとんどが外来で行えるようになっており、外来化学療法センターに専任看護師、薬剤師が常駐し、患者さんが安心して治療を受けられる様、特に注意を払っています。

主な薬剤

EC(AC)またはCE(A)F療法
E(エピルビシン)C(シクロフォスファミド)A(アドリアマイシン)F(5FU)の組み合わせで治療します。術後療法や再発の治療として最も標準的な治療法です。
タキサン系の薬剤
ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセル(タキソール)があります。アドリアマイシンなどを投与した後に追加することにより再発が更に抑えられることがわかっています。

Bホルモン療法(内分泌療法)

内分泌療法は乳癌がエストロゲンやプロゲステロンなど女性ホルモンに依存する性質を利用して治療する方法で、副作用の少なく、長期間使えるのが特徴です。切除した癌を調べてホルモン受容体を持つ場合に効果的です。閉経前・後により使える薬が異なり、閉経前では抗エストロゲン剤(エストロゲンが癌に働くのをブロックする)およびLH-RHアゴニスト(卵巣からの女性ホルモンをストップさせて一時的に閉経後の状態にする)を使用し、閉経後では抗エストロゲン剤またはアロマターゼ阻害剤(脂肪でエストロゲンを作る酵素をブロックする)を使用しています。

C分子標的療法

乳がんのうち15%~25%は、乳がん細胞の表面にHER2(ハーツー)タンパクと呼ばれる特殊なタンパク質を持っており、このHER2タンパクは乳がんの増殖に関与しています。このHER2をねらい撃ちした治療法が分子標的療法(ハーセプチン治療)です。HER2検査陽性の方のみがこの治療の対象になります。これまでは転移性乳癌のみに適応がありましたが2008年3月より早期に手術を施行した患者さんにも使用可能となりました。

3.放射線療法

乳房温存術後は原則として残存乳房に放射線照射を施行しています。5から6週かけて50~60グレイを照射します。

最後に

 乳癌は治療期間が長期になることがあります。患者さんの癌の克服に担当医のほか、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどが支えになります。
 患者さんが納得いく治療を受けられるよう、セカンドオピニオンをお勧めしています。

参考資料

最近3年間の乳癌手術数

2013年 2014年 2015年
乳房切除術 55 91 103
乳房温存術 54 34 42
センチネルリンパ節生検数 83 92 112

乳癌5年生存率(2006-2008の当院症例)

Stage 0 100%
Stage I 96%
Stage II 90%
Stage III 88%

→ 乳腺内分泌外科の概要