詳細な診療情報

呼吸器外科

詳細な診療情報 呼吸器外科

当科の特色

主な疾患

  • 肺がん
  • 気胸
  • 転移性肺腫瘍(大腸がんの肺転移など)
  • 縦隔腫瘍
  • 胸部外傷
  • 感染症(肺アスペルギルス症、膿胸など)
  • 漏斗胸
  • 悪性胸膜中皮腫
  • 重症筋無力症

肺がん診療の特徴

当院初診の患者さんの方針を受診後数日以内に科内のカンファレンスにて決定いたします。その後に呼吸器科、放射線科、病理部との合同カンファレンスにて方針を最終決定いたします。
 必要最小限の検査にて診断を行い、迅速に治療を進めます。患者さんの意向を尊重し、根治性と体への負担を十分に考慮した妥当な無理のない治療を心掛けています。安全性、根治性を第一に考えますが、低侵襲、美容的な一面も考慮に入れ手術を心掛けています。
 初期のがんの患者さんに対して胸腔鏡下肺葉または区域切除、縦隔リンパ節郭清を積極的に行っています。初期でない患者さんに対しては抗がん剤治療や放射線治療に手術を組み入れた集学的治療を行っています。
 手術後合併症の予防に努め、術後7〜10日目の早期退院を目指しています。術後の外来通院では、徹底した管理(腫瘍マーカー、胸部CT、頭部MRIなど)にて、再発と第二がん(再発でなく新しく発生したがん)の早期発見に努め、必要な場合は手術を積極的に行っています。

胸腔鏡下根治術について

早期がんの患者さんに対して胸腔鏡下肺葉切除または区域切除と縦隔リンパ節郭清を積極的に行っています。従来の開胸手術は肋骨と肋骨の間の筋肉を切り離しそこに器械を差し込み、強引に胸を開けてきました。そのため胸の壁に対する負担が大きいのみでなく、肋骨や肋間神経が傷つき、術後の疼痛や違和感が長く続き、患者さんを苦しめてきました。胸腔鏡はカメラで内部の様子を大きくモニターに映すことができるため、胸を大きく開く必要はなく、肺を取り出すための傷(およそ5~6センチ)が必要となりますが胸の壁に対する負担が大きく軽減されます。この手術は、肺がんの手術を多数経験したうえにさらに胸腔鏡下手術に慣れた医師のみに可能です。ただし、全ての患者さんに可能というわけではなく、根治性、安全性の面からできないこともあります。

ロボット支援下内視鏡手術について

2018年4月よりロボット支援下内視鏡手術が、肺がんおよび縦隔腫瘍に保険適応となりました。当院では2台の最新のda Vinci Xiシステムを用いて肺がんおよび縦隔腫瘍の一部の患者さんに週2〜3回の頻度で手術を施行しています。強拡大(10倍以上)の3D視野で、多関節を持つロボット鉗子を用いることによって、より繊細で確実な手術が可能となっています。2023年実績は102例で、その数と質を評価されてロボット手術の術者資格に必要な手術見学のためのメンター施設として認定されています。

気胸治療の特徴

  • 他院から要請があったときにも迅速に手術できるように体制を整えています。
  • 胸腔鏡を用いて最小限の傷(負担)で手術を行っています。
  • 術後3日ほどで退院でき、早期社会復帰が可能です。

その他の疾患に対する治療の特徴

  • 可能な限り胸腔鏡を使用し、負担の少ない手術を行っています。

当科の実績

2023年の手術件数は477件で、原発性肺がん258例、転移性肺腫瘍46例、縦隔腫瘍24例、気胸82例、その他67例でした。(うち、ロボット支援下内視鏡手術は102例)

代表的疾患の説明

肺がん

がんによる死亡原因のトップ(2006年度の男性で2位、女性で2位)であり、今後も年々増加傾向にあると予想されています。CT、PET検診の普及や画像診断装置の性能の向上などによって早期のがんの発見が増加しています。近年の肺癌診療ガイドラインにおいて、初期のがんに対する最も勧められる治療法は手術です。つまり、早期に発見し可能な場合は切除することがベストと、現時点では考えられています。

がんの種類について

肺がんは大きく小細胞がんと非小細胞がんの2つに分類されます。頻度的には後者が圧倒的に多いのですが、一般的に小細胞がんは非常に悪性度が高く、サイズが小さくてもすでに転移していることが多いため手術は適さないことが多いですが、抗がん剤や放射線が有効であるため内科で治療されます。一方で非小細胞肺がんは小さければできた部位にとどまっていることが多いので、手術で切除すれば治ることが期待できます。

診断について

診断には、細胞を採取してがん細胞であることを確認する必要があります。PETやCTなどの画像診断技術が発達しても病気を間接的に見ていますので、それらのみでは疑いとしか言えません。肺はその構造から細胞を内視鏡などで採取することが困難な場合や危険である場合が多くあります。また、がんに似た画像を呈する疾患も多くあるため診断の確定が難しいとされています。近年では全身麻酔が安全に施行されますので、手術中に診断をつけ、その場で根治を目指した手術まで施行するのが一般的です。

病期について

病期とはがんの進み具合のことを言います。がんの進み具合によって適切な治療法を選択することが重要です。できた場所にとどまっているがんに対しては手術の選択が適しており、また、体中に散らばっている状態に対しては抗がん剤による全身治療が適しています。CTなどの画像診断にて病期を定め治療方針は決められています。しかし、いくら検査しても、画像では捉えきれない小さな病巣もありますので検査にも限界があることを理解しておかなければなりません。

手術について

根治性(治るチャンス)、安全性、体への負担を考える必要があります。肺を切除する量が少なければ少ないほど負担は少ないはずです。しかし、がん細胞は肺の中のリンパの流れに乗って、リンパ節に流れて行きます。リンパ節は肺の中から縦隔と呼ばれる場所に続いています。よって、根治性が一番良いとされる術式は、がんのある部位のみを部分的に切除するのではなく、行きやすいリンパ節と肺を大きくブロックごと切除する肺葉切除、縦隔リンパ節郭清です(最近では、より小さな初期のがんに対して少ないブロックを切除する区域切除も根治性があると証明されました)。一方、肺を切除するためには胸の中に到達する必要があります。胸には肋骨など固い壁があり、この部位をどのように処理するかも負担につながります。胸を大きく開けるのか(昔からの開胸手術で負担が大きい)、それとも可能な限り小さな傷で、カメラで中を大きくモニターに映して手術するのか(胸腔鏡下手術で負担が小さい)で異なりますが、注意すべきことはどちらも肺とリンパ節を切除する量は変わらないので中の負担は同じであるということです。

気胸

胸の中には、左右に大きな空間があります。この空間を胸腔と呼び、この中に肺が入っています。気胸とは、この胸腔に空気などの気体が貯まった状態をいいます。気体が多く貯まると肺が押されて縮んでしまい、症状が出現します。気胸の原因としては、医療行為によるもの、けがによるものもありますが、多くは突然生じるもので自然気胸と呼ばれています。この自然気胸には、気胸で最も頻度の高い20歳前後のやせ型男性に多い原発性自然気胸と、肺にもともとの病気を持っている60歳前後の人たちに生じる続発性自然気胸があります。原発性自然気胸は、原因ははっきりしていませんが肺の一部(多くは肺の頂上部)にブラと呼ばれる非常に弱い袋ができ、それが破れて生じます。破れて生じた穴は自然に閉じますが、ブラは残るため再び破れることがあります。手術は、繰り返して破れるブラを切除して再発を抑えることを主目的とし、全身麻酔下で行いますが、胸腔鏡を使用することにより小さな傷で負担を少なくして、早期に社会復帰が可能です。

転移性肺腫瘍

転移性肺腫瘍は、肺にもともと存在する細胞ががん細胞になったものではなく、他の臓器でできたがん細胞が、血液やリンパの流れに乗って肺に運ばれてきてそこで増えて塊を作った状態です。例えば、大腸がんの転移性肺腫瘍ならば、肺のできものは大腸がんの1つの病変ですから、大腸がんの主治医が治療戦略を立て、その治療方針に沿って私たちが切除を行い、治るためのお手伝いをすることになります。大腸がん、整形外科領域の肉腫、泌尿器領域の胚細胞腫瘍などの転移性肺腫瘍は手術を行うことによって治りやすくなります。各科と連携しチャンスがあれば積極的に切除を行うことが良いと思われます。

縦隔腫瘍

胸の中にある縦隔という場所にできた腫瘍を縦隔腫瘍と呼びます。特に、縦隔の前方には胸腺が存在し、この胸腺から発生する腫瘍が代表的なものです。中でも胸腺腫は一番頻度も多く、重症筋無力症などの特殊な病気を合併し特徴的な臨床像を示すことがあります。病気の進み具合を表した正岡分類、顕微鏡での特徴を表したWHO病理分類などが広く使用されていますが、きれいに残さず切除できれば治りますので、切除可能かどうかをしっかり評価することが大切です。また、胸腺腫は遠くへ転移することは稀ですが、周りへ浸潤して増えていく傾向が強い腫瘍です。縦隔には胸腺の隣に重要な血管が存在し、これらに浸潤すればきれいに切除するためには重要な血管を切除再建する必要があります。当院では優秀な心臓外科医が揃っており、再建を必要とする手術も積極的に施行しています。

漏斗胸

漏斗胸とは、1,000人に1人の確率で起こるといわれている前胸部が陥凹する先天性な疾患です。前胸部が背骨の方にへこんでいるため心臓や肺が圧迫され心肺機能に影響を与えることがあります。心肺機能に問題がなくても美容上の問題で治療を要することがあります。当科では手術が必要な患者さんにはNUSS法と呼ばれる、体に合わせて湾曲形成したチタン合金製プレートを胸腔鏡で観察しながら、陥凹した胸骨の下に通して180度回転させて陥凹胸骨を持ち上げる手術を行います。このプレートは胸郭が矯正される3年後に抜去します。

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