医療関係者へ

詳細な診療情報

一般消化器外科

1、肝胆道系疾患

A. 胆石症

 現在胆石症に対する手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy: Lap-C)が標準術式となっていますが、胆嚢癌が疑われる場合や、高度の胆嚢炎の合併や上腹部の開腹歴があり危険度が高いと判断された場合には開腹で胆嚢摘出術(open cholecystectomy: OC)を行い,安全性と低侵襲性とのバランスを最も重視しています。急性胆嚢炎に対しては、発症からの期間が短い場合には可及的に緊急手術で対応をしていますが、発症から時間がたっていたり、炎症が強く危険と判断した場合は、超音波ガイド下に胆嚢穿刺(経皮経肝胆嚢ドレナージ)を施行して炎症を落ち着かせた後に手術(Lap-C)を行っております。総胆管結石症を伴う場合には、可能な限り消化器内科で内視鏡的に総胆管結石を取り除いた後に外科に転科し、Lap-Cを行い、患者さんの侵襲,負担を軽減するように努めています。入院期間は術前日入院、術後3日間、合わせて約5日間で、クリニカルパスを用いた計画的で負担の少ない医療を心がけています。退院後は基本的には1回の術後診察を行い、問題がなければ治療終了となります。また、術後の諸症状や合併症に対しては、責任を持って迅速に対応しています。

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
Lap-C 93
(78.8%)
80
(87.0%)
76
(76.8%)
114
(84.4%)
134
(82.2%)
148
(84.6%)
172
(89.1%)
172
(86.9%)
136
(90.7%)
142
(91.6%)
OC 25 12 23 21 29 27 21 26 14 13

B. 膵頭十二指腸切除

 当科は日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練施設に認定されており、肝胆膵領域の高難度手術を多数行なっております。膵頭部癌、中下部胆管癌、十二指腸乳頭部癌等に対しては、その占拠部位から膵頭十二指腸切除術が必要となります。当科では2015年には20例の患者さんに膵頭十二指腸切除術を施行しました。膵頭十二指腸切除術では、十二指腸は全切除されますが、われわれの基本術式では、胃は一部を切除するのみでほぼ全部を温存する(亜全胃温存膵頭十二指腸切除術)ため、術後の摂食量が保たれ、さらに幽門輪(胃と十二指腸の間の厚い筋肉)を切除するため胃からの食物の排泄遅延が起こりにくい特徴があります。膵頭部領域は狭い領域に重要な血管が密集しており、根治手術には門脈などの合併切除が必要となる場合が少なくありませんが、当科では積極的に門脈合併切除を行い、根治的手術の遂行に勤めています。最近はクリニカルパスを導入し、安全な手術と過不足のない周術期管理につとめ、最短で2~3週間程度での退院が可能となりました。

2013年 2014年 2015年 2016年
膵頭十二指腸切除術 18 17 20 18

C. 肝臓切除

 肝細胞癌、胆管細胞癌、転移性肝癌等の肝臓疾患や胆嚢癌、肝門部胆管癌等に対し、当院では積極的に肝臓切除を行っています。肝臓は血管、胆管等のバリエーションが多く、術前の画像診断を駆使し、腫瘍、腫瘤の大きさ、局在、脈管との位置関係等を十分イメージングした上で、過不足のない肝臓切除を心がけています。上述のように当科は日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練施設に認定され、年々肝切除症例数が増え、特に肝葉切除などの大きな肝切除や、胆道再建を伴う複雑な肝切除が増えています。残った肝臓が体を支えきれない状態(肝不全)に陥らないように、肝機能と肝臓切除量とのバランスを十分検討した上術式を決定しています。残肝が少なく、肝不全が心配される場合には術前にPTPE(経皮経肝門脈塞栓術)を行い、切除肝の門脈を塞栓し萎縮さ、残肝を大きくした上で手術を行います。また、保険適応のある肝切除においては腹腔鏡下肝切除術も行っており、2016年には、5例に適応といたしました。

2013年 2014年 2015年 2016年
肝切除 39 41 36 53

2、食道がんの治療

 食道がんに対しては、大きく分けて4つの治療法があります。

  • 1)手術:身体からがんを切り取ります。
  • 2)放射線療法:放射線を当ててがん細胞を殺します。
  • 3)化学療法:抗がん剤を投与して、がん細胞を殺します。
  • 4)内視鏡治療:内視鏡下に病変を切り取ります。

 治療法ごとに長所短所があるため、がんの進行度(病期)によってこれらの治療法を使い分けますが、食道がんに対しては手術が治療の中心となります。当科では、0期(粘膜内癌)は内視鏡治療を、IV期(がんが周囲の臓器に及ぶか、遠隔転移を有する)は放射線化学療法を適応としますが、その他の病期では手術が第一選択となります。一方、I、II、III期の食道癌(扁平上皮癌)に対しても、放射線化学療法によって手術に近い治療成績が得られる可能性も報告され始めていますので、治療法の決定に際しては相談のうえ、余病のある患者さんや、ご希望のある場合は、I、II、III期でも放射線化学療法を行うこともあります。最近II、III期の患者さんに術前補助化学療法を行うと術後の成績が良くなる(生存率が高くなる)ことが明らかとなり、当科でも2009年以降Ⅱ、Ⅲ期の患者さんには術前化学療法を行っております。このように、食道癌に対してさまざまな治療法を組み合わせて、その根治に努めております。当科は日本食道学会の食道外科専門医が常勤する病院であり、手術や周術期管理クリニカルパスに準じて行なっており、最近では最短術後2週間での退院も可能となっております。

2013年 2014年 2015年 2016年
食道癌手術 11 16 13 12

3、胃がんの治療

 当院外科では毎年120例前後の胃がんの根治手術を行っております(表参照)。胃のがんの出来た場所によって、幽門側胃切除術(胃の十二指腸寄り約2/3をとります)または胃全摘術(胃を全部とります)を基本術式としています。吻合(残った胃あるいは食道と腸をつなぐこと)には可能な限り自動吻合器を使うようにし、縫合不全や狭窄などの合併症を減らし、手術時間を短縮して体に負担の少ない手術となるよう心がけています。当院では、ガイドラインに準じた治療方針を立てており、病期(癌のステージ)によっては、手術後に抗がん剤による補助化学療法を用いたり、術中に抗がん剤投与を行ったりもいたしております。また、当院へ受診される患者さんは比較的進行した胃がんの方が多いのですが、そのような方でも手術により治癒が期待できると思われる患者さんには安全性を十分確保した上で拡大手術を行ったり、術前化学療法を施行した後に根治術を行うこともしばしばあります。入院から手術、退院までは当院で作ったクリティカルパスを使用し、順調に経過すれば幽門側胃切除術では術後8日前後、胃全摘術では術後12日前後に退院が可能です。手術前には執刀医から詳しい説明があり、ご本人やご家族に十分納得していただいてから手術をうけていただいております。当科へ手術目的で受診された患者さんでも、他施設での治療との比較(セカンドオピニオン)のご希望があればご意向に沿うように対応させて頂いておりますのでためらうことなくご相談ください。
 また、早期胃がんに対しては2010年より腹腔鏡下幽門側胃切除を適応としており、2014年からは、腹腔鏡下胃全摘術も開始いたしました

表:当科における胃がん手術実績

2013年 2014年 2015年 2016年
幽門側胃切除術 64 62 66 52
うち腹腔鏡下 26 19 30 17
胃全摘術 24 27 26 33
うち腹腔鏡下 0 2 2 0
その他の手術 11 16 15 11

表2:当科における胃がん手術成績

ステージ
5年生存率 92.2% 72.9% 55.0% 0%

4、大腸がんの治療

A. 小開腹大腸癌根治術

 当院では、2002年からムービング ウインドウ法による小開腹大腸癌根治術を導入し、現在までに621例に施行しています。7cmの創(キズ)で行い、オムニトラクト リトラクター システムにより絶えず手術の中心に創を移動して行います。吻合も手術時間の短縮と手術手技の安定化のため器械吻合による再建を行っております。平均手術時間は132分平均出血量75mLで、合併症としては腸閉塞を34例(5%)外科手術部位感染(SSI)を 13例(2%)に認めましたが、短期予後としては、手術に起因する死亡はありませんでした。2005年5月からは、術後3日目より食事を開始し、術後8日目に退院可能となるクリティカルパスを導入し、90%の方が術後8日で退院可能と判断され、平均術後在院日数も12日となりました。この手術の特徴としては、基本的には従来の開腹手術と同様の手術手技であり、腹腔鏡下手術と比較して、術野が3次元であるため、短時間で安全に手術が施行できること、小開腹手術(創の長さ7cm)と腹腔鏡下手術の術後回復には差を認めないことが挙げられます。したがって、本法は、安全に施行できる低侵襲手術であると言えます。現在当院ではクリティカルパスを使用した結腸癌の場合、通常の開腹術を施行しても約90%の方が術後8日目に退院可能な状況です。

小開腹大腸癌根治術の術後の創の長さは7cmです。
小開腹大腸癌根治術の術後の創の長さは7cmです。

上記の手術方法に関しましては、以下の学会ならびに学会誌に発表しております。

  1. 第105回 日本外科学会定期学術集会(名古屋, 2005年)シンポジウム
  2. 第19回 日本外科感染症学会総会(東京2006年)パネルディスカッション
  3. 第69回 日本臨床外科学会総会(横浜, 2007年) ビデオシンポジウム
  4. 本消化器外科学会雑誌 第41巻4号P380-387, 2008年
    低侵襲かつ安全性に主眼をおいたmoving window法による小開腹大腸癌根治術
    竹内英司、小林陽一郎、宮田完志ほか
  5. 消化器外科 第32巻10号 P1531-1541, 2009年
    Moving Window法を用いた小開腹結腸右半切除術
    長谷和生、竹内英司ほか

B. 腹腔鏡下大腸癌根治術

 当科では、2011年より本格的に腹腔鏡下大腸切除術を導入いたしましたが、年々症例数が増加し、2015年には50人の患者さんに腹腔鏡下大腸切除術を施行いたしました。腹腔鏡下手術の特徴としては傷が小さい(最大のもので4cm)、腹腔鏡というテレビカメラでお腹の中を拡大視して見るために開腹手術と同等かそれ以上の視野が得られ、出血もごく少量で済むことが多い、術後の回復が早く癒着も少ない等が挙げられます。ただし、開腹手術と比較して高度の手術操作が必要となりますので、当科ではすべての患者さんに対して適応とするわけではなく、ガイドラインに基づき、比較的早い段階の大腸がん患者さんに対して適応としており、それ以外の患者さんには上記小開腹手術を適応といたしております。

C. 下部直腸癌手術における括約筋温存手術の適応

 以前は、下部直腸にかかる癌は、ほとんどの症例で永久人工肛門となっていましたが、現在では下部直腸癌に対して、癌が残らないことを前提にできる限り人工肛門を回避し、肛門より排便ができるようにする括約筋温存手術を行っております。2015年では、下部直腸癌の57%の方が永久人工肛門にならない低位前方切除術(括約筋温存手術)を受けられています。また、かなり肛門に近い位置にある直腸癌でも、比較的早期のものであれば、内括約筋を部分切除して直腸を切除し、残った結腸と肛門を吻合し、一時的に小腸人工肛門を造設する括約筋温存手術も施行しております。人工肛門は3ヵ月後に閉鎖して自然排便が可能となります。

D. PET(positron emission tomography)が当院に導入されました。

 2006年4月より、大腸癌の診療においてPETによる保険適応の診療を開始しました。これにより従来の検査では指摘できなかった転移巣の診断が容易となり、治療方針決定に役立っております。

E. 肝転移の手術治療

 1996年より202例の肝切除術を施行し、5年生存率は30%です。

F. 大腸癌の手術症例数ならびに5年生存率

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
結腸癌 130例 107例 130例 116例 125例 133例 151例
直腸癌 53例 69例 53例 63例 59例 79例 76例
総数 183例 176例 183例 179例 184例 212例 227例
うち腹腔鏡下 8例 28例 27例 40例 50例 47例

 手術成績は、全国の大腸癌を扱う専門施設とほぼ同等の成績です。

大腸癌5年生存率

Stage 0 95.9%
StageⅠ 93.3%
StageⅡ 81.8%
StageⅢ 69.2%
StageⅣ 15.6%

G. 化学療法

大腸癌治療ガイドラインに沿って行っております。とくにその中で推奨されているFOLFOX療法(5FU、ロイコボリン、オキザリプラチン)、FOLFIRI療法(5FU、ロイコボリン、イリノテカン)につきましては、初回は、これらの治療方法を十分に理解し、安全に行うために入院して化学療法センターで行っております。2回目以降は自宅での生活が継続できるように入院ではなく、外来化学療法センターで2週間に1度の通院で行っております。また、現在では、化学療法科医師と協力して、アバスチン、アービタックス、ベクティビックスなどの分子標的薬も使用して治療に当たっています。

5、ソケイ(鼠径)ヘルニア(脱腸)について

 当院では、鼠径ヘルニアに対して1995年からメッシュ(人工の網)を用いたヘルニア根治術を施行し、現在までに2855病変の鼠径ヘルニアを治療してきました。従来の手術方法の再発率は約10%でしたが、本法による再発は55例(2)で、再手術も当院で施行しました。また、創感染も16例(0.5%)に認めましたが、全例改善しました。これらの経験をふまえて手術当日入院し、午後から手術、麻酔は体に負担の少ない局所麻酔と静脈麻酔を併用し、プロリンヘルニアシステム(PHS)、ジョンソン エンド ジョンソン社を用いヘルニア門を閉鎖する手術を行ってきました。現在までに1191病変に対してPHSによる根治術を施行しました。手術時間は約1時間で、術後病棟に戻れば歩行や食事も可能です。退院は翌日とし、創には医療用のボンドを用い、ガーゼ交換は不要です。入浴も術後3日目には可能です。2015年からは、症例を限定して、日帰り手術も可能になりました。手術にかかる費用も全身麻酔を用いた腹腔鏡下ヘルニア根治術に比べて安く済みます。2010年からは、体内に残る異物量を最小限に抑えた半吸収性のメッシュで、体に優しい素材ウルトラプロ ヘルニアシステム(UHS) 、ジョンソン エンド ジョンソン社を用いた手術に変更し、現在までに1108例の手術を安全に施行致しました。